織田作之助原作のあまりにも有名な作品ではありますが、それを所謂文芸ものを得意とする豊田四郎監督(『雁』『雪国』など)が大阪法善寺界隈の活気のある風俗をスクリーンに焼き付けながら男と女の人情の機微をさらっと描いていく手腕には鳥肌が立つような感動を覚えてしまいます。森繁久弥演じる柳吉のどうしようもないだめ男ぶりと、淡島千景の芸者蝶子の甲斐甲斐しい女っぷりは、絵に描いたような男女の関係ではありますが、何しろ芸達者な二人のやること、片時も目を離すことは出来ません。駆け落ちした二人がどん底まで落ちながら、蝶子の生活力の逞しさと柳吉ののほほんとした能天気さとの見事な対比。それでも離れることのない男と女の腐れ縁。それを底抜けに明るく、エネルギッシュに描いていく豊田監督のセンスはすごいと思います。当時の大阪法善寺の美術セットは一見の価値ありです。日本映画美術の第一人者の伊藤嘉朔が担当していて当時の法善寺界隈を余すところなく再現しているのです。撮影は三浦光雄で、彼は『雁』で豊田監督とコンビを組んでいますが五所平之助監督作品を多く手がけている人です。
『社長シリーズ』や『駅前シリーズ』でも森繁、淡島コンビは言うなればゴールデンコンビと言ってもいいくらいの作品を残していますが、この夫婦善哉は二人にとっての記念碑と言ってもいい作品です。ラストシーンで二人が寄り添って(夫婦善哉)へ入っていくところは、人生捨てたものじゃないなという感慨を抱かせるのです。
この映画を見れば、日本映画のレべルが生半可なものではないということが分かっていただけるでしょう。この作品に出会った幸せを噛みしめて下さい。日本映画の良さを満喫していただきたいです。
10/21/01